応用電力計算

2026-05-22

工場を稼働させるのに必要な石炭量をエネルギーと電力の関係から計算するチュートリアル(Factorio Wikiより)

このチュートリアルの目標

この記事ではシンプルな問いに答えます。
工場を稼働させるのに石炭はどれくらい必要か? Factorio の電力単位は本物の物理単位そのままで、 ワットもジュールも現実世界と同じ意味で使われているので、 中学高校で電力の単位を眺めた人なら違和感なく入れる内容です。
順を追って復習します。

実プレイでの効用

実プレイで何が嬉しいかというと、 鉱石パッチを見つけた時に 「ここの石炭で 1 GW までは賄えそうだな」 みたいな見積もりが頭の中でできるようになる点。
これができると拡張計画が一気に立てやすくなります。
細かい数値暗記は不要で、 比例関係さえ掴めれば十分。

工場の消費電力を測る

まず最初に知る必要があるのは、 工場がどれだけの電力を使うのかという情報です。
これは簡単で、 電柱をクリックすれば電力タブから確認できます。
例として、 レーダー 1 台が 300 kW の電力 P を使っているとしましょう。

Factorio は実際の物理単位を使っています。
電力、 すなわちエネルギーの転送の単位はワット (W) です。
キロワット (kW) は 1000 W、 メガワット (MW) は 1000 kW、 そして工場が十分に大きくなればギガワット (GW) は 1000 MW です。
1 GW 工場というと結構な規模で、 メガベース勢の入り口ライン。

必要電力を MW に揃える

これで工場がどれだけの電力を使うかは分かりました。
工場をフル稼働させ続けるためには 300 kW を維持する必要があります。
比較を簡単にするために、 これを 0.3 MW に変換しましょう。

燃料 1 個の保有エネルギー

次の質問。
石炭 1 個を燃やしたときに放出されるエネルギー E はどれくらいか? これも簡単で、 石炭にカーソルを合わせると示されています: 4 MJ

ジュールはエネルギー E の標準単位です。
ワットの場合と同様に、 キロジュール (kJ) は 1000 J、 という具合。
ジュールとワットの間には固定の関係があります。
1 ジュールのエネルギーは 1 秒間に 1 ワットの電力を供給できる
したがって 1 ジュールは 1 ワット秒に等しい。
式で書くと:

E = P · t [J] = [W] · [s]

我々の工場を 0.3 MW で稼働させるには、 毎秒 0.3 MJ を消費する必要があります。

Quiz 1: 石炭 1 個でレーダーは何秒動く?

石炭 1 個 (E=4 MJ) で、 単体レーダー (P=0.3 MW) をどれくらいの時間運転できるでしょうか?

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J = P · t
t = J / P = 4 MJ / 0.3 MW = 4,000,000 J / 300,000 W = 13.333 s

約 13 秒ちょっと。
短いと感じるかもしれませんが、 1 個でこれだけ動くなら工場全体の消費量が見えてきます。

Quiz 2: 5 秒間で稼働する工場の最大サイズは?

石炭 1 個 (E=4 MJ) が t=5 s の間に稼働させられる最大の工場サイズ (ワット単位) はどれくらいか?

Expand to reveal answer

J = P · t
P = J / t = 4 MJ / 5 s = 800,000 W = 0.8 MW

0.8 メガワットです。

Bonus: Factorio の石炭 1 個は何 g か

実世界の石炭 1 トン (m=1 ton) は火力発電所で約 7.2 GJ を生み出します。
Factorio の石炭 1 個の重さはどれくらいでしょうか?

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エネルギー比は質量比に一致するので、

m_Factorio / m_real = E_Factorio / E_real
m_Factorio = E_Factorio · m_real / E_real
            = 4 MJ · 1 ton / 7.2 GJ
            = 4,000,000 J · 1000 kg / 7,200,000,000 J
            = 0.555555 kg
            = 555.555 g

約 555 g です。
それでもキャラクターがそんなにたくさん持ち歩ける理由にはなりませんが…。

ここまでで分かったこと

これで最初の問いに答えるのに必要な情報は揃いました。
工場を稼働させるには石炭はどれくらい必要か? 正確に言うと問いはもう少し絞る必要があります: 工場を稼働させるには 「1 秒あたり」 どれだけの石炭が必要か?

ここで一度立ち止まって、 工場全体の消費電力と燃料 1 個の保有エネルギーを揃えておきます。
単位を秒単位に統一すれば、 あとは割り算 1 発で答えが出ます。

余談: レーダーが 20 秒動く理由

「なぜレーダーは 20 秒動作して 27 秒の半分の 13.5 秒ではなかったのか?」 という疑問が出る人もいるかもしれません。
これは、 レーダーがオン・オフを瞬時に切り替えるわけではなく、 稼働電力に到達する前に電力需要が立ち上がるためです。
したがってレーダーの電力需要は時間の関数 p_el(t) になります。

時間に対する機械の電力使用量を扱うとき、 一般的な式の記号は仕事を表す W で、 これは供給されたエネルギー E_supply と等しくなければなりません。
エネルギーや仕事の量を視覚化しやすくするために、 現実世界ではジュールではなくキロワット時 (kWh) がよく用いられます。

E_supply = W = ∫ p_el(t) dt

しかし積分の精密さはここでは必要ないため、 必要な電力供給を保守的に近似するために、 平均電力 P̄_el をレーダーの稼働時ピーク電力 P̂_el としてある期間 T にわたって定数と見なして式を簡略化できます。

E_supply = ∫_{t0}^{t0+T} P̂_el(t) dt = P̂_el · T

エネルギーの種類と変換

補足として、 ボイラーは石炭に蓄えられた 4 MJ の 化学エネルギー E_chem を蒸気に蓄えられる 4 MJ の 熱エネルギー E_therm に変換し、 蒸気タービンはそれをグリッドが要求する 電気エネルギー E_el として消費します。
グリッドはそれを毎秒の 電力 として伝達します。

押さえておきたい性質として、 ボイラーは需要に応じて消費量を調整する点があります。
レーダーが 300 kW しか使っていなければ、 ボイラーは 4 MJ の石炭を 13 秒間に渡って小出しに消費します。
一方で原子炉は時間制で固定消費なので、 別の最適化問題になります。
これは別記事にて。

大規模工場の燃料計算

Quiz 3: 20 MW 工場の毎秒石炭消費

20 MW の工場を稼働させるのに 1 秒あたりどれだけの石炭が必要か?

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E = P · t より、 20 MW の工場は 20 MJ/s を消費します。
石炭 1 個が 4 MJ なので、 1 秒あたり 5 個の石炭 が必要です。

5 × 4 MJ = 20 MW

これが大型工場の燃料計画の出発点です。
5 個/秒って結構な量で、 採掘機の生産能力との突き合わせが要ります。

Bonus: 必要な採掘機の台数

その量の石炭を生産するには何台の採掘機が必要か?

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リンクされたページによれば、 電動採掘機は 0.5 個/秒の石炭を掘ります。
したがって 電動採掘機が 10 台 必要です。

5 units/s ÷ 0.5 units/s = 10

意外と少ない、 と感じるかもしれません。
鉱石パッチの広さによっては 10 台並べるスペースが取れないこともあるので、 採掘速度ボーナスをいくつか研究して台数を減らす戦略もあります。

Second bonus: 平均的アメリカ家庭の年間消費との比較

平均的なアメリカの家庭は 1 か月あたり 3.2 GJ (通常は 888 kWh と表現) を使用します。
1 か月 (30 日と仮定) その期間この家庭を賄うのに必要な Factorio の石炭は何個か、 また蒸気機関 (900 kW) が定常的にその電力を供給するとして何世帯分支えられるか?

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1 世帯あたりの石炭量:

3.2 GJ = 3200 MJ
3200 MJ / 4 MJ = 800

1 世帯あたり 800 個の石炭が必要です。

蒸気機関 1 機が支えられる世帯数:

3200 MJ ÷ (30 d × 24 h × 60 min × 60 s) = 1234.5679 W
900 kW / 1234.5679 W = 729

1 つの蒸気機関 (900 kW) は正確に 729 世帯を賄えます。
これを聞くと、 Factorio の蒸気機関がいかに化け物スペックかが分かります。
実際は熱効率の損失があるので、 もう少し控えめになるはずですが、 ゲーム内では理論値そのままなので強い。

応用: 原子炉と蒸気機関の選択

ここまでの計算を踏まえて、 もう一歩実戦的な話に入ります。
工場規模が大きくなると、 蒸気機関だけでは限界が来ます。
計算してみましょう。

蒸気機関の燃料効率

蒸気機関 1 機は 900 kW 出力。
ボイラーは 1.8 MW を消費し、 石炭 1 個 (4 MJ) で 2.22 秒ぶん動きます。
蒸気機関 1 機あたり、 約 0.225 個/秒の石炭が要る計算です。
100 機並べると 22.5 個/秒、 採掘機が 45 台必要。
ここまで来ると鉱石パッチを跨ぐスケールになります。

原子炉の単純な強み

対して原子炉 1 基は熱出力 40 MW、 蒸気タービン経由で電力 50 MW (隣接ボーナス込み)。
4 基並列の隣接ボーナス込みなら 480 MW まで上がります。
燃料セル 1 個で 200 秒、 4 基構成なら 200 秒で 4 個消費。
ウラン採掘の頻度を考えると、 中盤の電力源として圧倒的に効率がいい。

切り替えタイミング

蒸気から原子炉に切り替えるタイミングは、 工場が 200 MW を超えたあたりが目安です。
それ以下なら蒸気機関の方がインフラが軽く、 燃料セル製造ラインを組む手間が省けます。
200 MW を超えてくると、 蒸気機関の数が 200 機超えで管理が大変になるので、 原子炉が現実的になります。

まとめ

電力計算の基本は、 W (毎秒のエネルギー転送) と J (エネルギー量) の関係を理解することに尽きます。
押さえておけば応用は機械的に解けます。
蒸気機関の必要数、 原子炉の燃料消費、 ソーラーパネルとアキュムレータのバランス、 すべて同じ式で計算できます。

覚えておきたい数値

実プレイで覚えておきたいライン:

  • 蒸気機関 1 機 = 900 kW
  • 石炭 1 個 = 4 MJ
  • 電動採掘機 1 台 = 石炭 0.5 個/秒
  • 原子燃料セル 1 個 = 8 GJ (200 秒で消費、 40 MW 相当)
  • 1 GW = 蒸気機関 約 1112 機

スケール別の電源選択

最後のラインを見ると、 純蒸気で 1 GW 工場を作るには 1000 機超の蒸気機関が要ります。
原子炉なら 1 基あたり数百 MW なので、 数機で済みます。
大規模化を狙うなら、 早めに原子力にシフトするのが現実的な選択。
ソーラー + アキュムレータは無燃料で良いですが、 面積を食うので超大型工場には向きません。

関連トピック

  • 原子炉の燃料セル最適化 (詳細は別記事の Circuit Network Cookbook 参照)
  • ソーラーパネル + アキュムレータの比率計算
  • Steam の温度と熱効率