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品質アップサイクリングの数学

2026-05-22

アップサイクリング工場でレジェンダリーを最大化するための数学的モデルと最適モジュール比率を解説します。

アップサイクリング工場から最も多くの Legendary を取り出すには、 どのモジュール構成が一番効率的か。
これは Factorio Space Age の「Quality」 を本気で運用しようとすると、 最初にぶつかる問いになります。

答えはひとつに定まらず、 クラフト機の種類とモジュール品質によって変わってきます。
組み合わせは有限なので計算してテーブル化することが可能で、 このチュートリアルでは、 簡略化のため無限技術からの生産性増加は無視した上で、 まず結果テーブルから提示する形にします。
数学モデルは後半に置いてあるので、 興味があれば追ってみてください。

最適比率の読み方

テーブルの見方

以下のテーブルは、 リサイクラーには常に品質モジュールのみを入れる前提で、 各クラフト機に入れる品質モジュールと生産性モジュールの最適比率を示しています。

値が整数になっていないのは、 同じティア内で複数のクラフト機を使うことが多いためです。
機械ごとに比率が異なる場合があります。
例えば "3.67 quality / 1.33 productivity" は、 4 : 1 の機械が 3 台、 3 : 2 の機械が 1 台、 という構成になり得ます。

"X products" 列は、 X 品質のアイテムを生産する機械に入れるモジュール数 (Quality + Productivity) を示します。

Items recycled の意味

各テーブルの最後にある "Items recycled" は、 1 つの Legendary 出力を得るために、 アップサイクリング全体へ何個のアイテムを投入する必要があるかを示す数字です。
何度もリサイクルされる同一アイテムは個別カウントしていません。

数字が小さいほど効率がよく、 入力に必要なアイテム量が少ない、 と読み替えてください。
経験上、 ここの値が 100 を切ってくると Legendary 工場として「回っている」 感じが出てきて、 30 を切るあたりからベルトが見えるレベルで Legendary が流れていきます。

通常 (Normal) モジュール構成

化学プラント低温プラント までの比較

Crafting machine Normal Uncommon Rare Epic Legendary Yield Items recycled
化学プラント 3 + 0 3 + 0 3 + 0 3 + 0 0 + 3 0.034014% 2940
組立機3 4 + 0 4 + 0 4 + 0 4 + 0 0 + 4 0.046275% 2161
鋳造炉 4 + 0 4 + 0 4 + 0 4 + 0 0 + 4 0.133814% 747
電磁プラント 5 + 0 5 + 0 5 + 0 5 + 0 0 + 5 0.176712% 566
低温プラント 6 + 2 6 + 2 6 + 2 6.5 + 1.5 0 + 8 0.119134% 840

Normal モジュールで Legendary を狙うと、 化学プラント では 1 つ出すのに約 2940 アイテム必要です。
かなり厳しい数字になります。

実プレイで Normal モジュールから Legendary を本気で量産するのは現実的ではありません。
「まず 品質モジュール3 を Uncommon 以上で揃える」 のが Legendary 工場の前提条件、 と思って進めるのがおすすめです。

Uncommon モジュール構成

鋳造炉 / 電磁プラント の優位

Crafting machine Normal Uncommon Rare Epic Legendary Yield Items recycled
化学プラント 3 + 0 3 + 0 3 + 0 3 + 0 0 + 3 0.059498% 1681
組立機3 3.75 + 0.25 3.75 + 0.25 3.8 + 0.2 3.9 + 0.1 0 + 4 0.082296% 1216
鋳造炉 4 + 0 4 + 0 4 + 0 4 + 0 0 + 4 0.243699% 410
電磁プラント 4.7 + 0.3 4.67 + 0.33 4.75 + 0.25 4.9 + 0.1 0 + 5 0.324189% 309
低温プラント 4.6 + 3.4 4.6 + 3.4 4.67 + 3.33 5 + 3 0 + 8 0.257621% 389

Uncommon になると 鋳造炉 / 電磁プラント が一気に実用域に入ってきます。
Items recycled が 500 以下に収まり始める、 というのがざっくりの目安です。

Rare モジュール構成

大量生産ラインで現実的な数字

Crafting machine Normal Uncommon Rare Epic Legendary Yield Items recycled
化学プラント 2.8 + 0.2 2.8 + 0.2 2.9 + 0.1 2.9 + 0.1 0 + 3 0.100660% 994
組立機3 3 + 1 3.1 + 0.9 3.2 + 0.8 3.33 + 0.67 0 + 4 0.145220% 689
鋳造炉 3.5 + 0.5 3.5 + 0.5 3.6 + 0.4 3.9 + 0.1 0 + 4 0.424039% 236
電磁プラント 3.6 + 1.4 3.6 + 1.4 3.6 + 1.4 3.9 + 1.1 0 + 5 0.588510% 170
低温プラント 3.6 + 4.4 3.6 + 4.4 3.6 + 4.4 3.9 + 4.1 0 + 8 0.565030% 177

Rare まで来ると 電磁プラント / 低温プラント の Items recycled が 200 を切ってきて、 大量生産ラインとしてかなり優秀な数字に届きます。
実プレイで「とりあえず Legendary を作って装備に回す」 ラインを組むなら、 Rare モジュール段階が現実的な開始ラインになります。

Epic モジュール構成

低温プラント が 90 を切る

Crafting machine Normal Uncommon Rare Epic Legendary Yield Items recycled
化学プラント 2.33 + 0.67 2.4 + 0.6 2.4 + 0.6 2.4 + 0.6 0 + 3 0.152486% 656
組立機3 2.5 + 1.5 2.5 + 1.5 2.6 + 1.4 2.8 + 1.2 0 + 4 0.232966% 430
鋳造炉 2.7 + 1.3 2.7 + 1.3 2.75 + 1.25 3 + 1 0 + 4 0.664130% 151
電磁プラント 2.6 + 2.4 2.6 + 2.4 2.67 + 2.33 2.9 + 2.1 0 + 5 0.974700% 103
低温プラント 2.6 + 5.4 2.6 + 5.4 2.6 + 5.4 2.8 + 5.2 0 + 8 1.122444% 90

Epic モジュールで 低温プラント を回すと Items recycled が 90 まで落ちて、 1 アイテムあたりのコストがかなり軽くなります。
ここで初めて「Legendary を継続的に出す」 という運用が現実的になる印象です。

Legendary モジュール構成

到達点としての Quality 0 + Productivity 8

Crafting machine Normal Uncommon Rare Epic Legendary Yield Items recycled
化学プラント 1.67 + 1.33 1.67 + 1.33 1.67 + 1.33 1.8 + 1.2 0 + 3 0.344061% 291
組立機3 1.67 + 2.33 1.67 + 2.33 1.67 + 2.33 1.8 + 2.2 0 + 4 0.586191% 171
鋳造炉 1.4 + 2.6 1.4 + 2.6 1.4 + 2.6 1.5 + 2.5 0 + 4 1.624266% 62
電磁プラント 1 + 4 1 + 4 1 + 4 1 + 4 0 + 5 2.722332% 37
低温プラント 0 + 8 0 + 8 0 + 8 0 + 8 0 + 8 4.835199% 21

Legendary モジュールで 低温プラント をぶん回せば、 Items recycled は 21。
Normal モジュール時の約 1/140 で 1 個の Legendary を得られる計算で、 ここが Quality 工場の最終到達点になります。

ちなみに、 すべてのティアで Quality 0 + Productivity 8 という構成になっているのが目を引きます。
「Legendary モジュールが揃えば Quality は要らず、 Productivity だけ詰める」 のが最適、 という結論が見えてきます。

クラフト機の台数

同時アイテム数からの逆算

入力が一定の Uncommon アイテム流入で常に満たされると仮定すると、 システム内に同時に存在するアイテムの比率を求められます。
それを使って、 各品質ティアに何台のクラフト機が必要かを算出する、 というのがこのセクションの計算です。

具体的には、 各反復後に m1,k+1 = 100% − m2,k+1 − m3,k+1 − m4,k+1 を設定します。
さらにモジュールによる速度変化を調整して求めます (生産性のみのモジュールを入れたマシンが、 ビーコンで追加の速度モジュール恩恵を受けないと仮定する)。

リサイクラーあたり

Crafting machine Recyclers Normal Uncommon Rare Epic Legendary
化学プラント 1 4.418130519 0.037216657 1.294369664 0.009779 0.431955
組立機3 1 4.733868899 0.052316655 1.527502978 0.015336 0.52576
鋳造炉 1 4.314446 0.082198 1.683088 0.03016 0.58448
電磁プラント 1 4.494435 0.116985 1.93479 0.049665 0.60795
低温プラント 1 5.23556 0.21384 2.53374 0.1034 0.594

Legendary 生産者あたり (正確)

Crafting machine Recyclers Normal Uncommon Rare Epic Legendary
化学プラント 90.1223 331.8198 38.5325 11.2893 2.9653 1
組立機3 52.8432 208.4632 30.3992 9.8094 2.8783 1
鋳造炉 24.7668 89.0483 19.9206 7.7712 2.8592 1
電磁プラント 16.5379 61.9418 17.4010 7.4908 3.1822 1
低温プラント 10.8718 47.4350 18.2124 8.8138 4.2654 1

Legendary 生産者あたり (保守的、 整数丸め)

Crafting machine Recyclers Normal Uncommon Rare Epic Legendary
化学プラント 53 198 23 7 2 1
組立機3 31 123 18 6 2 1
鋳造炉 14 53 12 5 2 1
電磁プラント 14 56 16 7 3 1
低温プラント 9 41 16 8 4 1

実プレイでは「保守的」 列を使って整数台数で組むのが現実的です。
低温プラント なら 1 Legendary に対して、 リサイクラー 9 / Normal 機 41 / Uncommon 機 16 / Rare 機 8 / Epic 機 4 台。
これで連続生産ラインを組めば、 ボトルネックの少ないアップサイクラーが完成します。

クラフト機別の基礎パラメータ

Crafting machine Module slots N Base productivity bonus p0
化学プラント 3 +0%
組立機3 4 +0%
鋳造炉 4 +50%
電磁プラント 5 +50%
低温プラント 8 +0%

鋳造炉電磁プラント は基礎生産性 +50% を持ちます。
Quality 計算でも有利です。
低温プラント はモジュールスロット 8 という別格の数を活かす方向で強い、 というキャラ分けです。

品質の確率 (基礎仕様)

1 ロール 1 段上昇が基本

アイテムが生産され、 初期の判定で品質が上がることになった場合、 90% で 1 ティア上昇、 9% で 2 ティア、 0.9% で 3 ティア、 0.1% で 4 ティア上昇します。
すでに高いティアから始まっている場合、 上限で打ち止めです。

実プレイで「Normal 入力からいきなり Legendary がぽろっと出た」 という経験は、 この 0.1% に当たったことを示しています。
レア体験ではありますが、 数百万回のクラフトを回す Quality 工場ではちゃんと統計に乗ってきます。

数学モデル

表記の定義

この数学モデルは時間離散モデルです。
時間に関する微分を扱う代わりに、 次の状態は直前の状態の直接関数として表されます。

  • mi,k ... i ティアの材料の数 (1=Normal、 2=Uncommon、 3=Rare、 4=Epic、 5=Legendary) を、 k 回目の反復後、 クラフトされる前の状態で表す。
  • ni,k ... i ティアのアイテムの数を、 k 回目の反復後、 クラフトされた後で表す。
  • p0 ... クラフト機の固有の生産性ボーナス
  • N ... クラフト機が装備できるモジュール数
  • qr = 4 × 6.2% = 0.248 ... リサイクラーに 4 つの Legendary 品質モジュール3 を入れたときの品質確率
  • pi = p0 + xi × 25% ... i ティアの材料を扱うクラフト機に xi 個の Legendary 生産性モジュール3 が入っているときの生産性
  • qi = (N − xi) × 6.2% ... i ティアの材料を扱うクラフト機に入っている Legendary 品質モジュール3 の数 (N−xi) による品質確率

品質行列

品質チャンスを持つ任意の機械が材料を処理すると、 そのアイテムの品質が上がる確率を持ちます。
この品質上昇の確率を変換行列としてモデル化できます。

  • Normal output は常に Normal input からしか作られない (Normal からの上昇は無い) ため、 1 項しか持ちません。
  • Uncommon output は、 品質上昇に失敗した Uncommon input のほか、 Normal input が 1 ティア上昇したものからも作られます。
  • 同様の方程式は高いティアでも繰り返され、 下のティアからのジャンプ確率と自身のティアで上昇に失敗した入力の両方を合計します。

出力数は機械の生産性で増加するため、 各ティアのマシンからの出力量は、 そのマシンの生産性で乗算できます。

n1,k+1 = m1,k+1 × (1+p1) × (1−q1)
n2,k+1 = m1,k+1 × (1+p1) × q1 × 0.9 + m2,k+1 × (1+p2) × (1−q2)
n3,k+1 = m1,k+1 × (1+p1) × q1 × 0.09 + m2,k+1 × (1+p2) × q2 × 0.9 + m3,k+1 × (1+p3) × (1−q3)
n4,k+1 = m1,k+1 × (1+p1) × q1 × 0.009 + m2,k+1 × (1+p2) × q2 × 0.09 + m3,k+1 × (1+p3) × q3 × 0.9 + m4,k+1 × (1+p4) × (1−q4)
n5,k+1 = m1,k+1 × (1+p1) × q1 × 0.001 + m2,k+1 × (1+p2) × q2 × 0.01 + m3,k+1 × (1+p3) × q3 × 0.1 + m4,k+1 × (1+p4) × q4 + m5,k+1 × (1+p5) + n5,k

注意すべき点は、 Legendary の式が q5 を使っていないことです。
すでに Legendary である入力から作られる Legendary 出力は品質モジュールによる影響を受けないため (すでに最大品質だから) です。

品質行列・生産性行列の分解

この一連の式は行列乗算として書き直せます。
Quality and Productivity 行列は品質ベクトル (q1−5) と生産性ベクトル (p1−5) で組み立てられます。
入力ベクトル mk にこの変換行列を掛けることで、 各ティアの出力量 nk が得られる、 という構造です。

さらなる単純化として、 生産性行列はスケーリング行列として因数分解できます。
これで「機械が品質と生産性にどう影響するか」 の一般的枠組みが整う、 というわけです。

リサイクラーの行列

リサイクラーは他の機械と似ていますが、 いくつか特有の性質があります。

  • 入力は完成品 (nk) で、 出力はそのアイテムの材料 (mk)
  • 生産性モジュールを受け付けないので、 品質モジュールで埋めるのが明らかに最適
  • 品質モジュールはすべてのティアで同じ qr を使うことになる
  • リサイクラーには組み込みの (逆) 生産性 -75% があり、 投入分の多くが失われる
  • アップサイクリング工場では Legendary 製品を再リサイクルしないので、 変換行列の右下の 1 を 0 に手動で設定する

リサイクラーに 4 つの Legendary 品質モジュール3 が入っていると仮定すると qr = 0.248 です。
変換行列 R は数値の入った 5×5 行列として組み上がります。
各列は入力レアリティ、 各行は機械処理後の出力レアリティを表します。
例えば A3,1 = 0.005 は、 Normal 入力 1 個につき 0.005 個の Rare 出力が得られることを意味します。

結合モデル

組立側の Quality and Productivity 行列を A、 リサイクル側の行列を R と呼びます。
ある反復での最終的な出力は、 その反復での材料に組立変換を適用したものなので、 次のように書けます。

nk+1 = A × mk+1

材料 mk+1 はリサイクラーの出力なので、 mk+1 にリサイクラー行列を代入できます。

nk+1 = A × R × nk

ただし、 既に述べたようにリサイクラー変換行列は Legendary 品をリサイクルしないように右下の値を 0 にしてあります。
そのため、 反復 k からの既存の Legendary 製品をキャリーオーバーする行列を加える必要があります。
Ck と書くことにします。

nk+1 = A × R × nk + Ck = A × R × nk + C × nk = (A × R + C) × nk

ループ変換行列 L (A × R + C) を使えば計算は単純です。
入力ベクトルに対して何回も L を乗算するだけで、 アップサイクラーを何度も回したときの出力比率を高速に計算できます。

nk+1 = L × nk
nk+2 = L × nk+1 = L × (L × nk) = L² × nk
...
nk = L^k × n0

収束と Legendary 比率

アイテムは品質が上がるか、 リサイクラーの負の生産性で破壊されるかしかありません。
すべてのアイテムは最終的に、 Legendary になるかリサイクラーで破壊されるかのどちらかに収束します。

多くのサイクルを回したあとは、 Normal 〜 Epic 行の比率はほぼゼロになります。
十分に大きな k (例えば k=100) を選べば、 投入したものの何 % が Legendary になるかが読み取れる、 という構造です。

計算例

すべての段階で品質モジュールのみ (Legendary 品質モジュール3) を入れた 電磁プラント を使う、 と仮定します。
Legendary 段だけは品質モジュールが要らないので最適ではないのですが、 例として単純にするためそうしています。

q1−5 = 0.31 (品質モジュール 5 個)、 p1−5 = 0.5 (EM の組み込み生産性、 追加生産性なし)、 qr = 0.248 を代入します。
最終的なループ行列 L を組み立てると、 主対角に 0.1946 系の値が並ぶ 5×5 行列になります。

このループ行列を 100 乗して、 各 Normal 入力が 100 回アップサイクルに戻された場合の変化を見ます。
L^100 の左下値 (この例では 0.013) が、 Normal 入力 1 個につき何個の Legendary 出力が生成されるかを示します。
異なる生産性と品質の比率を試し、 この値を最大化する組み合わせをプログラムで探索する、 というのが最適化の流れです。

経験上、 ここまで自分で計算しなくても、 既存の Quality calculator (外部ツール) や上記のテーブルを使えば実用上は十分です。
ただし、 自作 mod で新しいクラフト機を足したときや、 無限研究で生産性が極端に高くなったときは、 この行列モデルを直接いじることになります。

補足: 行列モデルの限界

研究で極端に高い生産性が得られると、 このパターンは崩れて収束を妨げます。
これは単に「正の材料循環」 が存在することを意味していて、 統計的には 1 セットの原料が無限の Legendary 製造を生む状況になります。
総生産性が 400% に近いほど行列反復の収束は遅くなり、 より大きな k が必要になる、 という挙動です。

通常プレイの範囲では収束は十分早いので、 上のテーブルをそのまま使って大丈夫です。